ストールで落ちた!

その事実に,誤った情報やいい加減な推測あるいは誤解などがないように,出来れば同じような失敗を一人でも減らすことに役立てばと,恥を忍んでその時の記憶と感じたことを書いてみる。ネットで公開するのだから,何処に引用されてもやむを得ないが,出来れば記載の一部だけを取り上げることはご勘弁願いたい。

まず最初に断言しておきたいのが,落ちたのは
全て俺自身の操作や判断が原因だということ。
使用している装備や機体の性能・メーカー・エリア・コンディション・出身スクール・イントラ・ライセンス,ましてや所属するクラブや連盟や協会など,ストールの原因には『そんなの関係ねえ!』のである(トラブルがあったというと,なぜかそういうものにつなげたがる人がいるので念のため)。なお,俺自身も『ストールで落ちた』と聞けば『機体が悪かったんじゃねぇ』と無責任に言ってたけど,そんな受け止め方に大きな問題があったと反省している。

ストールの
原因は,明らかに引き過ぎたこと。それも瞬間的にではなく,手に一回巻いたブレークをかなりの力で引き続けたこと。これでは例えどんなに低速で粘る機体であったとしてもストールに入って当然,入ったと言うより入れたと言ったほうが正確なのかもしれない。パラでブレークを引き過ぎてはいけないというのは常識である。俺もストールに入れるつもりなどはなかったし,人がそれで落ちたと聞けば『引き過ぎちゃダメだろ〜』と思ってきた。ではなぜそんなに引いてしまったのか。

降りようとした広場は50m×150m位の広さで,充分に降りられるスペースがある。風上側は長い面に沿って道路と電線があり,風下側は山の斜面になっている。奥には建物があって,オーバーしそうな時には山側の斜面に逃げて貼りつくしかない。その斜面もススキの藪程度で大きな木がなく,降りたとしても別に問題は無い。風は道路側から安定して吹いており,乱気流の心配はあまり無い。この風と斜面でリッジソアリングが出来るエリアなので,多少でも風が当たっていれば沈下はしにくい。もともと俺自身のホームエリアであり,そんなコンディションは充分に知っていて,以前からこの広場よりも
300mほど離れた海岸の砂浜に降ろしていた

この時も,最初は砂浜に降ろそうと思っていた。ところが直前になって『降りた後に歩く距離が遠くて疲れる』とか『砂浜の上で畳むと砂が入るしキャノピーが傷みそう』などと思いつき,数ヶ月前には簡単に降ろしたという記憶もあって充分な広さがあるように思え,軽い気持ちで広場に向かってしまった。後で思い出したが,前に降ろした時には地表近くまで翼端を折ったまま高度処理したのだが,今回は
翼端折りはまったく考えもしなかった

弱い向かい風もあり,降りられるだろうと高目に進入したのだが,リフト帯に入っている感じで沈下が少なくなかなか降りない(後でGPSで確認すると0〜1m/s程度だった)。ちょっとオーバー気味かということで,滑空比が悪くなるようにブレークをあてる・・・さらにあてる・・・さらに引く・・・途中,無理をしないで山の斜面に降ろそうかとも思ったのだが,リフトのせいか大きく引いても機体は怪しい動きはしない。そのまま進んでようやくリフト帯を外れ,沈下が増えて無事に降りられると思った直後だった。

瞬間的にキャノピーが後ろにすっと落ちて背中を引っ張られる感じ。思わず下を見てただ身構えるしかなく,直後にものすごい衝撃で背中から地面に叩きつけられた。直後は声も出せない・息も出来ないような状態。ハーネスをやっとの思いで外した頃に仲間が駆けつけてくれた。奥の建物の50m程手前だった。

ということで,今回の事態に至った経緯を俺なりに考えてみた。

 1,紙一重まで引いていても,それがかなり危険な状態だという自覚が足りなかった。
 2,1−2クラスだから,低速でも粘るという過信・甘えがあった。
 3,LDでストールさせた経験がなく,低空でストールした時の危機感が不足していた。
 4,ブレークの操作で滑空比を落とす飛び方が有効だと思っていた。
 5,ランディング直前にブレークを手に巻く癖があった。
 6,長時間飛んでいたので集中力が切れ思考力が鈍っていた。
 7,サーマルや乱気流が無い穏やかな風のために油断していた。
 8,降り方についての具体的なアプローチを考えないままに進入した。
 9,ターゲットを狙うことについて,自惚れがあった。
10,砂浜に降ろす当初の判断を,根拠なく直前に変えた。
11,長時間のフライトで,浮かれて調子にのっていた。
12,斜面の藪に逃げると回収が手間取るうえ,かっこ悪いと思った。
13,沈下を増やすために翼端を折って降りるべきだった。
14,上腕の筋トレ効果で,引く力が強くなっていた。
15,下にいる人にいいところを見せようとした。

あれこれ原因を考えたが,なんといっても
『低空でのストールが恐い』という意識が足りなかったのが一番大きいのではないだろうか。以前はブレークをほとんど当てない飛び方をしていたのに,いつの間にか平気で低速で飛ぶようになっていた。

最近の機体は失速特性が良くて目いっぱい引いてもストールしにくいらしく,スクール生でストールに入ったと言う話はあまり聞かない。反面,ベテランといわれアキュラシー競技に出場するような人達の中で,ストールで落ちて怪我をしたという話を聞くことは多い。(落ちた人の批判やアキュラシー競技が悪いと言っているのではない,念のため)

普通に引いたら落ちないはずの機体で,失速しにくいのをいいことに(手に巻いたりして)ギリギリまで引いてしまうせいかもしれない。大きく引いても,一線を越えるまでは安定して沈下が増えるだけで,特に危険な挙動も『恐さ』もない。ということで,さらにギリギリまで引くようになり,ほんのちょっとの引き過ぎや風の変化でストールに入ってしまう
危険な領域で飛ぶ事に慣れてしまっていたのではないだろうか。

そして,それがどれくらい危険なことか!例えば『サーマル荒れ荒れのコンディションで高性能機のアクセルを踏みながら飛ぶ』くらいの覚悟を持っていたとは思えない(俺の場合)。そして,一線を越えた時の危険性の大きさは,上空での潰れ等に比べるまでもないくらい深刻なものになっていた(低空でストールに入れば,対応する暇も無く瞬間的に地面に墜落です)

『絶対潰れないパラは無い』のと同じように『絶対ストールしないパラは無い』はず。今回の貴重な経験を教訓としてこれからの飛び方を考えていきたいと思う。



  
その後の経過について

体の状態だが,直後から自分で立つことが出来たし,背中全体に強い打撲の痛みがあるものの,内部からの鈍い痛みや骨が折れたような激しい痛みは無い。『圧迫』をやってしまったかと覚悟はしたのだが,どうやらそうでも無さそうな気がした。レントゲンに写らないような圧迫でも結構痛いと聞いていたし,我慢できるようなら医者に行かなくても何とかなるだろうと考えた(周りの批判を出来るだけ避けるために穏便に!穏便に!)。で,そのまま自分で運転して帰宅,自然治癒力に期待して湿布を貼って早めに就寝。翌日は,飛び過ぎによる腹筋やふくらはぎの筋肉痛もあり,全身ボロボロ状態ながら無事に1日勤務することが出来た。痛みは数日続き,やっぱり何とか大丈夫そうだと確信できたのは4日程経ってからでした(悪い例です。強い衝撃を受けたら,ちゃんと病院で診てもらいましょう!)

最後に,今回たまたま怪我が無かったのは本当に奇跡的,よっぽとウンが良かったのか,この前購入した『愛宕神社の飛行安全御守』のご利益があったのかもしれません。